12月 04日 一
試みに、筆を持って、横線を書いてごらん。そう、漢数字の「一」を。
どうかな?その「一」は?
上手に書けたかな?それとも、思うようにいかなかったかな?
もし、今、あなたが書いたその「一」に、あなたの全てが現れていると指摘されたら、どう思うかな?
「勝手に決めんなよ。そんなんで、何がわかるんだよ!」って、思うかな?
確かに、そうだよね。そんな「一」の字ひとつで、俺がわかってたまるかって、ね。
でもね・・・
高校生の頃、小林秀雄が好きでよく読んでた。『西行』とか『無常といふ事』とか。
評論はともかく、小林から二つの事を学んだ。
そのひとつは、作家の本を全集で読む事。
大学の頃、坂口安吾や中島敦、そして、吉田松陰なんかに取り組んだ。
リルケの原文は、数ヶ月で挫折しちゃったけどね・・・。
もうひとつは、審美眼を養う事。つまり、本物を見るって事。
縁あって、遠州流の茶道を学び、美術館や博物館に通ったよ。
でもなかなか難しいし、実際、そんなに解るもんではないね。好き嫌いもあるしさ。
でも、本物に触れる事は大切だと思う。芸術でも人間でも・・・
タイトルは失念したけど、小林と亀井勝一郎がバスに乗って、伊豆を散策している時の話。
確か、亀井勝一郎だったと思うんだけど、まぁ、いいや。
そのバスに、地元の女子高生が乗ってきた。
彼女の顔を見た瞬間、小林は亀井に、これから彼女が歩む人生が見えるって、伝えるんだ。
すると、亀井が「俺も見える」と応えた。
顔を見た瞬間、その人が解る、もしくは、解ったような気になる。
手相というのもあるし、人相というのもある。
もっと簡単にたとえれば、電話でもそうだろう。
相手が目に見えなくとも、なんとなく、わかる。
どんな思いで話をしているかって。
だいたい、人は声を聞けば、ね。
そういうことって、考えてみれば普通にやっていることだろう。
ほら、第一印象や先入観とか、この言葉は特別なものではないよね。
第一印象が良かったとか、先入観を持って彼を見たとかってね。
そう、それと、同じ事なんだ。小林や亀井が見たものは。
ただ、その瞬間に、得る物・気付く物を正しく受け止め判断する力があるんだ。
それはおそらく、人生の波にもまれ、苦しみ、あがいた結果、身についたものだろう。
そして、それと同時に、彼らが本物を知っていたからだろう。
最初にいったね。本物の芸術と本物の人間に会う事の大切だって。
お拝をして教えを請える人に会えれば、そんな師と呼べる人に会えれば、幸せだよ。
だからこそ、常に審美眼を磨き、感度を良くしていなければならない。
坐禅の修行に独参<どくさん>というのがあるんだけど。
坐禅中に、師が鈴を鳴らす。これは見解<けんげ>をもってこいという合図だ。
すると、修行者は一目散に走って、喚鐘場に並ぶ。
そして、師の合図のチリンチリンが聞こえるや、喚鐘をふたつ打つ。カーン・カーンってね。
本当はそのカーンの鐘の音ひとつで、勝負あり、なんだって。
そう、「カーン」に全部が現れている、足音に全部現れている、呼吸ひとつに、お拝の姿に・・・だから、もう一度坐りなおしてこい、とチリンチリンって、鈴が鳴る。
さて、最初の「一」の話だけど、やっぱり解るんだよね。見る人が見れば、解る。
「書は心だ。上手い下手ではないんです」という意見もある。
けれど・・・考えてごらん。
いくら真心があっても、それを上手に表現できなければ、もったいないよね。
若い頃は年上のお姉さんに惹かれてしまう事が多い。
僕も経験があるけれど、近所にとても優しく綺麗な人がいてね。
ませたガキだったんだね、お姉さんに憧れてた。
朝、「おはよう」と挨拶をするだけで、その日の訪れを感謝したくなるくらいの人だった。
会えない朝は、学校を休もうと思うくらい、落ち込んだ。
そんなある日、僕は彼女の落とした手帳を拾うことになる。
その手帳に書かれた字を見たとき、僕は・・・
字の話から進めてきたけど、じゃあ、お前の字はどないやねん、と言われると・・・
いざ、練習。
MEMO
1、強い線条
2、腕の上げ下げ
3、己の字を己の中から産み出す思想と努力
神原
Posted at 14:04h, 05 12月SECRET: 0
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全くその通りだと思います。
芸術も何でも本物に出会うこと。
最初は分からなくても、そのうち何がいいものか、自然と分かってきます。
新婚旅行でパリに行った時、クロード・モネの「睡蓮」を見てきました。その時は何も分からなかったのですが、数年後、日本でモネの絵を見に行きました。
すると・・・・。
不思議な事にモネの絵の空間だけが、色が違って見えたんですよ!!
あれは自分でも不思議でした。自分でも知らない間に沢山の出来事を経験し、沢山の人から沢山の事を学び、沢山の芸術に触れてきたから、少しは成長したのかな。と。
・・・・・でもまだまだなんですけどね。^_^;
「人生の師」と呼べる人と沢山であって、それは人でも本でもいいんですけど、そうやって少しでも成長したいですね。
慧
Posted at 05:33h, 06 12月SECRET: 0
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身が震えるような出会いは、嬉しいものです。それが、本でも、芸術作品でも。まして、人ならば。
生きる力の源泉に、力強いうねりの波をもたらしてくれます。
ひろみつ
Posted at 20:40h, 06 12月SECRET: 0
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味のある話ですね。僕は普段どんな声で、どんな話し方をしてるか・・・あまり誉められた物ではないように思います。小者です。とびっきりの小者です。
上手下手ではない、という言葉は僕も演奏をするので、よく考えることなんですし、良く言われることです。
音楽でも字でも何でもそうですが、技術だけでも駄目。でも心だけでも駄目なんです。「上手下手ではない」というのは精神と技術を求め続けた人が最後に、それらを突き抜けて到達する境地だと思います。
上手ならいいってもんでもない、かといって下手でもいけない・・・・下手糞という言葉もありますが上手糞という言葉もあります。版画家の棟方志功がよく言った言葉だそうです。
それを目指すと言うより、自ずとそこへ行き着くということかな・・・・
気の遠くなるような境地ですが、どうせやるならそこへ行き着きたいものですね。
慧
Posted at 23:14h, 06 12月SECRET: 0
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上手糞ですか・・・はじめてこの言葉を知りました。ありがとう。
上手下手だけで計れないものが、やはり、ありますね。
アラモ
Posted at 01:34h, 07 12月SECRET: 0
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私、美味しいラーメンが食べたいんですが、うちには、チャルメラの醤油味しかなくって。。。親友がお昼は100円引きのラーメンでしたって、大きな海苔の入った葱たっぷりのラーメンにご飯が付いてて、その後ろにAsahiなんて青い字が見える写真送ってくれたんですよ。実際食べられないんですけど、お腹がいっぱいになりました。
本物をライブで楽しめるってこれ以上最高のことはないですよね!ラーメン屋でラーメン食べたいです!
私も作り手ですが、作品には自分がしっかり現れますよね。じゃないとその芸術は生きてないし。見る側は好き嫌いがあるので、すべての人に気に入ってもらうのは無理だし求めていません。
最近いつも思うんですが、愛が大切だって思うんですよ。病気したり、メンタル部分でやられたり、金銭的に寂しくなると愛が欠けちゃうじゃないですか。でも結局最後はこれしかないな、、って思って愛が復活です(笑)気がついたらもう随分と長いこと、こんな感じでアートを続けてます。
慧
Posted at 05:10h, 08 12月SECRET: 0
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やはり、己以上の物は造れないと思うのです。その愛を深め高めていく作業を怖れない事が大切だ、と。
ラーメンですか・・・アメリカにはありませんか?なんでもそろっていそうだけど・・・
そういえば、僕も海外に行くと、無性にうどんを食べたくなる日があります。
アラモ
Posted at 14:58h, 09 12月SECRET: 0
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>己以上の物は造れないと思うのです。その愛を深め高めていく作業を怖れない事が大切
そうですね。素晴らしいお言葉ありがとうございました!あーでも、今度は美味しいうどん食べたくなっちゃいました。。。
白蓮華
Posted at 20:14h, 10 12月SECRET: 0
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勢いのある芸術が好きになりました。
今週末、友人のガラス展がありますが
彼女の勢いある「情熱」が作品に
閉じ込められているのだと思うと
ドキドキします。
私も年上が好きでした。
小学生の時の初恋は、近所の高校生のお兄ちゃん。
近所の女子達の憧れの的でした。
温かくて、かっこよくて…
同学年の男子は、弟のように思えました。
しかし…
恋文は渡せませんでしたね。
字が下手だから^^
今はメールがあるけれど。
お寺や神社でご朱印を戴きます。
戴いた字がのびのびと立派だとやはり
書いてくださったその方の心が写しだされているように思えます。
慧
Posted at 20:48h, 11 12月SECRET: 0
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母が高松の出身で、親戚に製麺所があります。乾麺を30分かけてゆがけば、天下一品のうどんとなります。
30分、待てるか否かの勝負です。
慧
Posted at 20:57h, 11 12月SECRET: 0
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年末から1月14日まで、銀座松屋で、「小堀遠州 美の出会い展」があります。
時間が許せば、どうぞご覧ください。