大童法慧 | 焼香
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5月 29日 焼香

焼香の時、間違えて、香ではなく炭を手に持った人がいました。
作法を知らず、つまんだ香を口に入れた人もいました。
『曹洞宗行持規範』の導師焼香法によると。
導師の焼香は2回。
右手の親指、人指し指、中指の三指で香をつまみ、両手にささげて丁寧に頂いて香炉に投じ、次に更に香小量を取って炉に投ずる。
初めに焚く香を主香、次に焚く香を従香という。
従香は頂かないでそのまま炉に入れる。
導師が2回の焼香であるなら、参列者の焼香は、主香の1回のみのはずだが・・・
焼香は3回するのものだと主張する御老僧もおられるし、いや1回・2回・3回どれでもいいのだ、とする方丈さんもいる。
「1回だと、心がないと思われそうだし、3回の方が丁寧かな」と思うのも人情。
「焼香は心をこめて、一回でお願いします」 という司会者の案内が空しく響く。
参列者は「早く終わらせようとしているな」って、感じてしまう。
先日のお通夜での事。
多くの参列者が予想され、棺の前に香炉が10個も用意されていました。
通夜が始まり、遺族の焼香の時、それが起こりました。
故人様の孫、小学3年生の男の子が、左端の香炉で焼香をしました。
きっと、おじいちゃんの事が大好きだったのでしょう。
嗚咽しながら、香を焚き手をあわせてました。
彼は、左端で焼香を終えると、次の香炉で焼香をし、また、次の香炉で焼香をし、そして、4番目の香炉に香を焚いた時・・・それに気付いた葬儀社の社員に誘導されて席に戻されてしまいました。
手を引かれて行くとき、振り返りながら香炉を見つめる彼の顔が印象的でした。
通夜の法話で、彼にひとこと伝えました。
・・・あのね、全部の香炉で焼香したとしても、その悲しみは解決できやしないものだよ。
ありたっけの香を焚いたとしても、大好きなおじいちゃんは、生き返りはしない。
でも、ね。あなたの心を、おじいちゃんは一番喜んでいると思うよ。
だから・・・
香の香りは、遍く世界にいきわたります。


MEMO
1、香食
2、富那奇と羨那の逸話
富那奇と兄の羨那が、力を併せて故郷にお堂を建てました。
二人は一刻も早くお釈迦さまをお迎えしたく、敬慕する気持ちを込めて香を焚いたところ、その煙はお釈迦さまに届きました。彼らの心に響かれたお釈迦さまは、そのお堂に行き、説法をされました。
このように、心を込め念じながら香を焚けば、お釈迦さまはそのお姿をお示しになり、法を説かれ、聞く者は安心を得るという伝。
3、身を清める
4、道元禅師 線香の煙 無常


13 個のコメントがあります
  • cyonam
    Posted at 12:51h, 30 5月 返信

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    こんにちは。
    「良い香のお香こそ、仏さんには極上の供養…」と教わり、ご先祖様には良い香のするお線香を、そして煙がすーっと上にのぼっていくものをと選んでいます(ってこれは実家の話ですが)。お盆などには自分がこれはと思うものを実家に持って帰ります。
    最近煙が出ないお線香だとかがありますが、私はあれには反対!です。まぁ人それぞれですし、何が良い悪いは言いにくい世の中ですが…。
    あと最近とても気になるのは、お焼香を終えた人に、葬儀社がお手ふきを配る事です。
    まるで手が汚れたかのように…。あれはなぜなのでしょうか…。私はいただかない事にしています。汚れてもいないし、ゴミを増やすだけですから。
    お焼香…気持ちも大事、それを表わす事もまた大事。回数について、難しい議論ですね。ちなみに私は心を込めて1回です。

  • Okei
    Posted at 13:18h, 30 5月 返信

    SECRET: 0
    PASS: 98d17a15c6d4e86e09dbb769d0dcd183
    やり場ない悲しみを埋めてくださる、これぞ人が宗教者に期待することと思います。
    彼が10個の香炉をすべて制覇することで埋めようとした心の空虚を、みごとに法話で充たすお手伝いをされたことに頭が下がります。
    翻って、法律家のところへ相談にみえるかたの多くもまた、心のなかにやり場ない業火を抱えていらっしゃいます。
    さりげない会話のなかで、まずその炎を鎮めてさしあげられるよう精進したいと思います。

  • Posted at 18:49h, 30 5月 返信

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    コーヒーの香りがする線香をご存知ですか?
    メロンやマンゴーの香りもありますよ。そのうち、ビールや芋焼酎とかも発売されたりして・・・
    >お焼香を終えた人に、葬儀社がお手ふきを配る
    はじめて知りました。いろんなサービスを思いつくものですね。導師の席にも、お手ふきがあるのでしょうかねぇ。

  • Posted at 19:03h, 30 5月 返信

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    だから・・・と続けた話が、どれだけ響いたかわかりませんが・・・
    翌朝、大きな声で「おはようございます」と、彼は挨拶してくれました。
    辛い事だけど、やり場のない悲しみを避けて通る事は出来ません。

  • 大閑道人
    Posted at 23:40h, 30 5月 返信

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    メモ系の葬儀社でしょう、あれには、閉口します、だって、まだご焼香が続いている最中に、焼香を終えた人に、即座に配布するからです。
    ゴワゴワと、ザワザワと、音がして気持ちを壊します、ほんと、迷惑!

  • Posted at 09:22h, 31 5月 返信

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    老師の地域も、お手拭があるのですか。
    過剰なサービスでの競争は、本末転倒の結果に至るはずです。
    香で身を清め、お手拭で身を清め・・・忙しいお葬式のようです。

  • cyonam
    Posted at 17:26h, 03 6月 返信

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    >コーヒーの香りがする線香をご存知ですか?
    びっくりしすぎました…。需要があるから供給できるんでしょうねぇ…。
    私は、死んだなら好きなものの香りより、本来のお香のかおりが嬉しいだろうなと思います。
    大きなお葬式などに行くと、たくさんの葬儀社の社員がお焼香終わる方にどんどんお手拭きを渡し、どんどんゴミも増えていき、異様な光景です…。

  • 岳さん
    Posted at 21:22h, 03 6月 返信

    SECRET: 0
    PASS: efb417f3a6ce30cfd668415ba19056a4
    立ち上る煙もそう、広がる香りも、みな、時がたてば消えるもの。
    この子は、それを知りつつも、いつまでも、いつまでも、消えないで欲しいと願っていたのかもしれませんね。気づくまで……。
    この子はこの子なりに、葬儀をしていたように思えます。
    久しぶりに、訪れましたが、しみじみと考えさせられ、よいお話でした。ご精進を!

  • ひろみつ
    Posted at 13:38h, 06 6月 返信

    SECRET: 0
    PASS: f3c483acb35df62be31a398cd96892f6
    母が他界して3週間ほどたちました。
    そのお孫さんの姿が目に浮かぶようです。なんて優しい子なんだろうと抱きしめてあげたいです。
    そうせずにはいられなかった、その子の気持ちは、とても尊い物に思えます。
    良いお話をありがとうございます。

  • Posted at 17:31h, 09 6月 返信

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    >この子はこの子なりに、葬儀をしていたように思えます
    その通りですね。この子なりの決着のつけ方だったのでしょう。
    子供は、忘れていた事を思い起こさせてくれますね。

  • Posted at 17:32h, 09 6月 返信

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    このたびは、たいへんでしたね。
    お母様のご冥福を、謹んでお祈り申し上げます。

  • towa24h
    Posted at 16:00h, 18 9月 返信

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    初めてコメントさせて頂きます。
    内容の有るブログですね。少しずつ拝見中です。
    お孫さんは、左端で焼香を終えると、次の香炉で焼香をし、また、次の香炉で焼香をし、そして、4番目の香炉に香を焚いた時・・・それに気付いた葬儀社の社員に誘導されて席に戻されてしまいました。
    その社員さんもきっと10個の香炉全てにお香を焚いてもらいたかったと思います。
    何故・・・それは3個目の香炉に移動した時には必ず気付いていた筈です。
    でもご参列者及びご会葬者の全体の流れを感じ、その行動に移したと推察します。
    このお孫さん気持ち、これこそ供養ですね!
    だって心が有るもの ・・・
    人の心とは難しいものです。
    よかれと思った行動が人の心を傷つけたり、
    何気ない行動に感謝して戴いたり・・・
    あのね、全部の香炉で焼香したとして、その悲しみは解決できやしないものだよ。
    ありたっけの香を焚いたとしても、大好きなおじいちゃんは、生き返りはしない。
    でも、ね。あなたの心を、おじいちゃんは一番喜んでいると思うよ。
    う~ん。法話も心ですよね。
    このお孫さん・・そしてご参列の方々の気持ちが救われていると同時に、各参列者の心に一生残るものと感じます。
    供養の心! これからもお願いします。
    追伸
    私のメルアドにコメント有り難うございました。
    何が正しくて何が間違いか未だに試行錯誤しています。
    本当の答えって有るのかなあ!

  • Posted at 23:25h, 19 9月 返信

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    問いを持ち続ける勇気こそが答えではないか、と思うようになりました。
    試行錯誤の根底にあるものを見失わないでいたいですね。

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