大童法慧 | ご利益を考える
何かを得ようとするのではなく 何かを捨ててみよう
大童法慧,曹洞宗,僧侶,祈祷,相談,生き方,悩み
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5月 22日 ご利益を考える

さて、今日は「利益」について、お話をしたいと思います。
これ、なんと、読みますか? ハイ、そこのお姉さん。
ほかに、ありますか?じゃあ、そちらの、お嬢さん。
この言葉はもともと仏教語で、「りやく」と読みます。自分が得るということではなく、他の人に恵みを与える、という意味です。
しかし、この銭や金の世の中、この字は、「りえき」と読んで、儲けや得ということを意味するようになってしまいました。
本日は、このりやくについてお話をいたします。
りやく、ご利益といいますが、「本当のご利益って、何かな?」について、ご一緒に考えてみましょう。
この世の中、たくさん、ご利益がございます。
いくつぐらいあるのか、私、調べてきました。
読み上げますので、お聞きください。
【資料1】
どうでしょうか?いっぱいあるでしょう、ご利益が。
実は、もっともっとあるそうですよ。
では、こんなに、たくさんご利益があるのに、ひとつも、私のところには、まわってこないなぁと、思う方は手をあげてみてください。
そうでしょう、わたしも両手両足をあげたいくらいですが・・・
あっ、手を下ろしてくださいね。いつまでも手をあげてても、ご利益は、ありませんからね。
特に、みなさんに関係するご利益を言えば、何でしょう?
やっぱり、恋ですか?愛ですか?恋愛成就?
いや、いいのがあるんですよ、京都に。
京都の東山に、安井金比羅神社ってのがありまして。ここが、有名なんです。
ここの神様は、不倫成就の神様なんです。
もともとは、縁切りの神様だったんですが、いつの間にか、縁を切ったついでに、縁を結ぶようになりまして、両方のご利益があるそうです。
ちなみに、境内は、こんな願い事が書かれた絵馬や形代でいっぱいだそうです。
「馬鹿女房と別れて、会社の絵理ちゃんと、一緒になれますように 俊夫 」
「主人と一日も早く縁が切れて、●●さんと結婚できますように マリリン 」
私も今年の秋は、京都に旅行をしようかなぁ?
他に、皆さんに関係あるとしたら・・・ああ、ぽっくり、ですか。
例えば、会津コロリ三観音ってのが、ございますね。
中田観音様、立木観音様、鳥追観音様、ですね。
お参りされた事は、ございますか?なかなか、準備万端でございます。
ああ、そうだ、とびっきりの物をご紹介いたしましょう。
それは、嫁いらず観音というのが、ございます。
これは、ですね。岡山県の井原市にあります。
誤解しないでくださいよ、「いつまでも健康で、幸福な生涯を全うし、嫁の手を煩わす事がない」という事で、嫁いらずですから、ね。
あの嫁がいらんから、嫁いらずって言うのでは、ありませんよ。
さてさて、嫁いらず観音と嫁いびり観音は、どっちが強いのだろう?
ここまで、たくさんのご利益を紹介してきましたが・・・
これは、ご利益とは、人間の欲や願いの裏返しだと、言ってもいいかも知れませんね。
自分の力では、いかんともしがたい、どうにもならない事を、神さんや仏さんにおすがりをして、「どうぞ、お救いください、どうぞ、お助けください」ってね。
こんな川柳が、ございます。「ご利益は あてにしないで 初詣」
年の初めに、初詣で、まぁ、皆さんは、お持ちでしょうから、福沢諭吉を数枚いれるかもしれませんが・・・多くの方は、小銭を賽銭箱に投げ入れる。ご縁がありますようにで、5円。十分にご縁がありますようで、15円。ちょっと、奮発して、十二分にご縁がありますようにで、125円。
それで、家内安全、家庭円満、交通安全、無病息災、大願成就・・・あとは、死んでも命がありますように、なんて、ね。
さて、皆さんにお尋ねいたしますが、この●●寺様にお参りされて、何かご利益はありますでしょうか?
「いえいえ、私は、ご利益なんか求めておりませんが、でも、お寺には、親しくお参りします」と、宣言できるお人があれば、実に、大物のお方でございます。
目に見えるお金や健康だけのお話ではなく、お寺にお参りする、何よりのご利益は、ここの方丈様や若方丈様と接し、ものの見方が変わる事こそ、ご利益ではないかな、と思うのであります。
仏教とは何か、を一言で表せば、ものの見方の事でございます。
お釈迦様と同じものの見方をする事で、この世を正しく見ていく事ができるのであります。
信仰心の厚いお嫁さんと、意地悪ばあさんとのお話です。
【資料2】
この姑と嫁のお話、どうですか?
こんな意地悪ばあさんなら、嫁も反撃してですね、「あのクサレばばあ、早く、地獄にいきやがれ」と、拝んでもよさそうですけど・・・しないんですね。
何故か?それは、やはり、この嫁様は、お寺にお参りする事で、仏の教えに親しく、お釈迦様と同じものの見方をしているからではないでしょうか。
こんな、話がございます。
昔、お釈迦様のもとに、若い修行僧がおりました。
夏のとっても暑い日に、坐禅をしていたのですが、もう暑くて暑くてたまらない。
いやぁ、ここでは、とっても暑くて坐禅なんかできないから、場所を移動しようと、考えました。
どこか涼しいところはないかな、と探すと、木陰を見つけました。
よし、ここがいい、と決めて、また、彼は、坐禅を始めました。
しかし、夏の暑い日。風が生ぬるくて、なんだか気持ち悪い。だんだんいらいらしてくる。
ふと、彼は「今日は、坐禅はやめて、水浴びでもしようかな」って思ってしまいました。
すると、ますます暑さが我慢できなくなってしまったんですね。
どんどん邪念が広がりまして、こんな事して、何になるのだろう、とか。
いっそ、修行なんかやめて、町に遊びに行こうかな、とかって、思うんですね。
ああもう我慢ならない、と坐禅をやめ、立ち上がった時、彼は、はっと我に返って、お釈迦様のところに行き、相談をしました。
「お釈迦様にお尋ねいたします。
お釈迦様は、お悟りを開かれた偉大なお方ですから、暑いとか寒いとかを感じないでしょうけれども、どうすれば、そんな風になれるのでしょうか?」
お釈迦様は、こんなふうに答えました。
「例えば、弓矢が飛んできて、体に刺されば、痛くないものはいないだろう。
それと、同じで、私も暑いときは暑いし、寒いときは寒いよ」
若い修行僧は、驚きながら、また尋ねるんですね。
「じゃあ、私とお釈迦様は、同じなのでしょうか?」と。
そうすると、お釈迦様は、丁寧にお諭しになれれました。
「暑いという第一の矢が当たるところまでは、実は、お前さんと私は、同じだけれども、その後が違うんだよ。
私は、今日は暑いなぁで終わりだけれども、お前さんは、暑いから風がほしいとか、水浴びがしたいとか、いろんな事を考えて、第2・第3の矢があたっている。
私は夏は暑いのが当たり前だと、思っていいるから、第2の矢があたらないんだよ」
お分かりになられましたか?この話。
お釈迦様は、私たち向かって飛んでくる、苦しみの矢は、防ぐ事ができないって、教えておられます。この苦しみは、誰しも、防ぐ事ができないんだって。
暑い時は暑いし、寒い時は寒い。辛い時は辛いし、悲しいときは、やっぱり、悲しい。
それは、お釈迦様でも、私も、皆さんも、まったく、同じです。
しかし、第2.第3の矢は、ものの見方によって、防ぐ事はできるんだよ、と。
人間は第1の矢を受けてしまうと、その事にあわてふためき、自らが第2・第3の矢を受けてしまい、どんどん事態がひどくなる。
けれども、第1の矢だけを受けとめて、終わる事ができれば・・・
もう、あれこれと迷う事がなくなる。
この●●寺様にお参りするご利益とは、何か?
もう、皆さんは、おわかりでしょう。
それは、例えば、米が大豊作になるとか、そんな事ではありませんね。
むしろ、ご利益は、その後の事、起こった事への受け止め方。
お米が豊作になれば、神様や仏様、そして、ご先祖様や周りの方々に、おかげさまと、心から感謝できます。もし、万が一、不作となったとしても、後悔だとか、恨みだとか、そんな気持ちに支配されなくなってきます。
この受け止め方を学べる事こそが、本当のご利益でしょう。
あいだみつをさんを、皆さんはご存知ですね。
あいださんは、お釈迦様のこの教えを、このような詩に表しました。
先ほど、お渡しいたしました資料をご覧ください。
【資料 詩】
いかがでしょうか?
第1の矢は避けられないものだ、と。しかし、愚痴や弱音という第2・第3の矢は、受けないという決意なんですね。
そうは、言っても人間、弱いもので、第2.第3の矢を受け続ける事もあるのだ、と。
ついつい、愚痴や弱音を吐き続け、人の悪口でうさばらしをし、どうして私ばかりなんでこんなに苦しいのか、と思い続ける事もあるでしょう。
でも、そうやって、第2・第3の矢を受け続けているという事に、まず、気付く事が大切だと思うのです。
ご利益って、お金が儲かる事でも、不老長寿になることでもない事を、お分かりいただけたでしょうか?
本当のご利益とは、人間としてのいのちの根がふかくなること、それが、よい人とめぐり合い、豊かな潤いのある人生を送る事ができる。
一人ひとりが仏のお釈迦様のものの見方を身につけ、本当の自分に気づくご利益を実感し、他の人びとにも、そのご利益を分け与え、ともに生きてまいりたいな、と思うのです。
人生80年時代と申しますが、ちょっと皆さんご想像ください。
青春時代というのは、何歳から何歳ぐらいまでと考えられますか?
人生に四季を当てはめて考えると、次の夏は働き盛りの時期でしょうし、秋は、壮年、そして老人になれば冬の時代と、そうなるようにも思いますが、実はそうではありません。
人生は冬から始まる、と
幼少から二十歳ぐらいまでは体力、知力を鍛えます。
これが玄冬、つまり冬なんですね。
春は、青年期20から40ぐらいですね、この時期はまさに青春、人生は機を得て就職や結婚、家庭、社会に存在感を示すとき。
夏は40から60、中年期です。朱い夏、朱夏といいます。あかく太陽が燃え盛るように、人間のつながりを生かしながら活動するとき。
そして、60を過ぎ高齢期、これが秋です。白秋、といいます。
今まで培ってきた事の自信をもって、人生の収穫を楽しむ時期です。
さあ皆さんは、どの季節でしょうか。
夏ですか?秋ですか?まさか春はないでしょう・・昔は春だった。
この収穫の時期、この実りの秋にこそ、大きなご利益、ここ●●寺様と親しくお付き合いをなさることによって、大きな収穫、大豊作にしていただきたいと願っております。
ご清聴ありがとうございました。
※補足  盛永宗興老師 「どうぞ」の話


MEMO
釈尊は、次のように弟子達に尋ねた。
「まだ私の教えを知らない者にも、心楽しい時もあれば、苦しい時もある。が、すでに私の教えを知っている弟子たちにも、心楽しい時もあれば、苦しい時もある。まだ私の教えを知らない者と弟子のあいだには、どのような違いがあるのか」
弟子達は謙虚に言った。
「分かりません。貴い人よ、どうか教えて下さい。
私たちは貴方の教えを根本とし、貴方を眼目として生きているのですから」
「不幸にして、矢に打たれた人があるとしよう。
ここで、次にどうするのかに関して、二種に分かれるだろう。
一人は、慌てふためき、第二の矢を受けてしまう人。
もう一人は、矢に打たれても痛みに耐え動揺せず、第二の矢をかわすことの出来る人である。
仏の教えを知らない凡夫は、最初の人である。苦しさに嘆き悲しんで、混迷の心は深まるばかり。
楽も、かえって迷いの心を増すばかりである。
仏の教えを知る人は、第二の人である。苦しみを受けてもそれに耐え、苦しみに囚われることが無くなり、生死の束縛を脱する事が出来る。
このことが、仏教を知らない者と知る者との違いなのである」

サンユッタ・ニカーヤ 雑阿含経の第十七  箭経
2、相田みつを 「道」「つまずいたおかげで」
3、光照の益 蓮如
4、実利、法、愛欲、解脱・・・古インドの人生の四大目的
※ 半紙にキーワード
※ 60代中心の婦人会で、40分
※ 対象の土地柄を考慮する事


12 個のコメントがあります
  • 大閑道人
    Posted at 19:30h, 23 5月 返信

    SECRET: 0
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    >古インドの人生の四大目的 → 実利、法、愛欲、解脱
    フロイト曰く「富・地位・名誉、そして、女性の愛」
    ユング曰く「それもあるだろうが、それ以外の何か」
    マズロー曰く「だからさ、それが自己実現なのよ」
    これ、そのまま、古代インド人の人生目的そのままの会話ですね。
    (ただし、会話は架空です)

  • 白蓮華
    Posted at 23:33h, 23 5月 返信

    SECRET: 0
    PASS: 0aa037863c4c086d018919d17cefa018
    りやく
    自分が得るということではなく、他の人に恵みを与える、という意味です。
    ついつい先のことを考え
    他人に与えることより 自分の利益を考える・・・
    ここ何日か いろんな商談が舞い込み、
    儲けだの、利益(りえき)だのの言葉が飛び交い、まだ決まってもない交渉事に
    ただ ただうんざりした日々でした。
    「そんなために 作ったのではない!」
    そんな気持ちにもなりましたが
    理想だけではダメなんだろうか??と
    少し葛藤していました。
    江ノ島の不動明王で
    昨日 おみくじを引きました。
    「急がず 心静かに時を待てば
    後には 神仏のご加護ありて 
    幸せの路開かれる」
    この言葉に救われました。
    あまりにも タイムリーなので
    感動しました。
    今夜もありがとうございました。

  • Posted at 16:43h, 24 5月 返信

    SECRET: 0
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    現在は、消費による自己実現の世ですね。

  • Posted at 16:49h, 24 5月 返信

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    この話は、先日、友人のお寺の婦人会でしたものです。
    他人に与える視点を少し変えてみては、いかがですか?かつては、勉強するなんて、言い方もありましたよね。

  • 大閑道人
    Posted at 20:20h, 24 5月 返信

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    >消費による自己実現の世ですね

  • ひろみつ
    Posted at 13:03h, 25 5月 返信

    SECRET: 0
    PASS: f3c483acb35df62be31a398cd96892f6
    う~ん、嫌なこともいっぱいあるけど、とにもかくにもこうして毎日、どうにかこうにかつつがなく暮らせていられるだけで、すごいご利益をたまわってるようにも思うんですけどね・・・・。ありがたいなと。
    そうか、他に人に恵みを与えることとは知りませんでした。こっちが授かることだと思いがちですよね、そういえば。

  • Posted at 20:37h, 25 5月 返信

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    そのすごいご利益を無駄にしないように、お互い勉め励みましょう。

  • nasukabu
    Posted at 01:08h, 27 5月 返信

    SECRET: 1
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    リニューアルの挨拶が遅れてしまってスミマセンでした。昨年の5月に消息を絶ってしまったので、今年の5月にカムバックしてみました。プツンしてしまった理由はおいおい説明するとして、まずは法慧さんのご利益に預かろうと思っています。5月は夏の始まり、そして私の季節も夏のようですから…。
    ディズニーランド楽しんで来てください。
    奥様とお子様に 「ヨ・ロ・シ・ク」 …

  • petite aya
    Posted at 21:11h, 28 5月 返信

    SECRET: 0
    PASS: 8b4a3b7860a4ad7a9e5223b8e9123d4a
    「つまずいたおかげで」
    きっと同じ詩だと思いますが、それが相田さんの詩だとは知りませんでした。
    時に、つまずいたことを忘れてしまいます。
    いけませんね・・・。
    http://niyni.blog35.fc2.com/blog-entry-23.html
    矢の話・・・。
    「人の振り観て、我が振り直せ」(漢字間違ってたら、愛嬌でッ)
    ちょうど矢の様な話を、人としたとこだったので、またまた唸ってしまいました。
    いつも、興味深いお話し、ありがとうございます。
    文より。

  • Posted at 23:57h, 29 5月 返信

    SECRET: 0
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    有楽町の駅の近くに、相田みつを美術館があります。帰国された折にでも、寄られてみてはいかがですか?
    書の古典を深く学ばれ、参禅もされた方です。

  • 葬儀夫
    Posted at 09:19h, 30 5月 返信

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    目の前の現象を理解するということはわかります。ですが、現象の内容や規模によるのではないかと思うのです。今流行の「右から来たものを左へ受け流す」ことができるのも事と次第によってです。
    例えば近年毎日のように殺人事件が起きていますが、このような物騒な時代にお釈迦様が生きていて、自分の子供が何らかの事件事故に巻き込まれた時、その現象を理解するだけで済むのでしょうか。少年に妻子を奪われた夫が何年かかっても裁判で少年を死刑にしたいと思う気持ちはその立場になってみないとわかりませんが、至極当然だと思いますし、自分なら第2の矢を相手に放つような非道な事をしてしまうかもしれません。
    「お釈迦様よ、あなたはこの今の世の中を眺めているだけで第2の矢を放ってはくれないのでしょうか・・・」

  • Posted at 22:07h, 30 5月 返信

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    お釈迦様の生きていた時代・・・戦もありました。酷い差別もありました。物質的にも豊ではなく、医療技術もまだまだでありました。
    それでも、いや、それだからこそ、第2の矢を受けるなよ、との教えでありました。

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