大童法慧 | 着信アリ
何かを得ようとするのではなく 何かを捨ててみよう
大童法慧,曹洞宗,僧侶,祈祷,相談,生き方,悩み
15245
post-template-default,single,single-post,postid-15245,single-format-standard,ajax_fade,page_not_loaded,,vertical_menu_enabled,side_area_uncovered_from_content,qode-child-theme-ver-1.0.0,qode-theme-ver-7.2,wpb-js-composer js-comp-ver-5.0.1,vc_responsive
 


1月 24日 着信アリ

親交のある葬儀社さんに誘われた、酒席での事。
「いやぁ、この前の葬式には、まいっちゃったよ」と、切り出してきた専務さん。
「何か、あったんですか?」と聞き返すと・・・
「実はさ、お通夜の最中にお坊さんの袖の中から携帯が鳴ってさ。
その着信音が、黒電話の音ね。また音量が大きくて、会場に響いちゃって。
しかも間の悪い事に、木魚を叩くお経の時なんだよね。
だから、木魚を止めて電話を切るって事もできなくてね。
まぁ、そのお坊さんはお経を優先したって事になるんだろうけど・・・
うちの社員があわてて駆けつけたけど、うまく携帯を取りだせないんだよね。
結局、30秒ぐらい鳴って・・・で、その5分後にもう一回、鳴っちゃって。
で、葬家は怒っちゃってね。
なんで、あんな坊さんを紹介したんだって、さ。
法慧さんなら、こんな時どうする?
人間だから、失敗はあるじゃない。もしも、万が一、そうなったらさ?」
問われた私は答えました。
「実は・・・告白すると、僕も一度あるんですよ。
お通夜ではなく、施主さんのお宅での法事のときでしたけど。
仏壇を前に座り、いざ、はじめようとした瞬間でしたね。
頭陀袋の中から、着信音が鳴り響いて。
ちなみに、その時の着信音は『男はつらいよ』
非礼を詫びて、仕切りなおして法事を終えました。
終わっての法話に、僧侶もつらいよって話しを交えながらしたら喜ばれました。
でもホント、はじまる前で良かったと思いましたね。
そのおかげで、必ず、マナーモードにする習慣が身につきました。
まあ、とにかく謝罪するしかないでしょうね。本当に失礼いたしましたって」
「えっ、何あったの、そういうことが」
「はい、お恥ずかしいお話しですが・・・」
「でも詫びたらさ、許してくれたでしょ。
そういう事だと思うんだよな、失敗したら詫びるのが基本だよね。
その坊さんもね、通夜のお経が終わった時にでも、失礼いたしましたと頭をさげれば、それで済んだと思うのよ。
それをしなかったんだよ、あの坊主は。
できないのかな?いい年してさ。
っていうか、あんたは、いちお、お坊さんなんだろって言いたくもなるさ。
結局、葬家の怒りは収まらなくてね。
葬儀の時は、違うお坊さんを手配してくれ、と。
リリーフだね、火消し役。でも、ふつうは有り得ないよ。
・・・まぁ、今回改めて、派遣は危険だって痛感したね」
お芝居や講演会、そして映画館。
始まる前に携帯電話の確認がうながされる。
通夜や葬儀の時も、携帯電話は電源を切るかマナーモードにしてください、と司会者がお願いをしている。
そして、本人はしたつもりでも・・・結構、鳴る。
年間に何件かの葬儀や法事があるが、改めて、思い直したい。
その葬儀や法事は、「一度きり」のものだ、と。
その葬儀は、葬家にとっては、大切な人との最後のお別れの場である。
その法事は、施主家にとっては、再び時や想いを共有できる場である。
失敗、失態、失言・・・恥ずかしい事の多い人生のなかで、学ぶ姿勢のみが救いとなる。


MEMO
1、禅機
2、袖中傍観 拱手傍観
3、失敗学


8 個のコメントがあります
  • 大閑道人
    Posted at 08:07h, 24 1月 返信

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    命長ければ恥多し
    とはいうものの、昔はありえなかった恥もIT時代になって誕生しましたね。
    私の場合、携帯電話は控え室に置いたまま。

  • アラモ
    Posted at 09:52h, 24 1月 返信

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    もしかしたら高いポジションの人間になると、素直に謝るとこととか出来なくなるのかもしれませんね。そしてきっとそのお坊さんは、「ありがとう」って、さらっと言えない人なのかもしれません。
    話題とはちょっとズレるかもしれませんが、以前曹洞宗のサイトのコミックで、道元さまを読んだのですが、船上で出会った老典座のお話を思い出しました。
    「男はつらいよ」ですか!
    いいですね!
    因みに私は、オジー・オズボーンのクレイジートレインなんですけど、妙な場所で鳴るとかなり恥ずかしいです。
    坐禅の日は携帯は車のダッシュボードの中に入れてます。

  • Posted at 18:01h, 24 1月 返信

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    荘子ですね。
    兼好法師も「いのちながければ辱おほし、長くとも四十にたらぬほにて死なんこそ、めやすけるべけれ」と、嘆じておられます。
    加藤耕山老師が90を過ぎての回顧に、60の頃を振り返り、「あの頃は、まだ若くて人間ができていなかった」とあります。
    道の深深たる事、磨いても磨いても、尚、未だし、だなと受け止めました。

  • Posted at 18:08h, 24 1月 返信

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    御詠歌や般若心経を着信音にしているお坊さんもいます。お題目もあるのかな?
    機種変更した時に、寅さんは卒業しました。
    尚、来月の帰国の際、お会いできるように調整してみます。

  • けちぇ
    Posted at 12:47h, 27 1月 返信

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    謝らなかったのはやっぱ駄目でしょうね。
    かけがえない家族の最期の送りの儀式ですもの。

  • 白蓮華
    Posted at 17:05h, 27 1月 返信

    SECRET: 0
    PASS: 0aa037863c4c086d018919d17cefa018
    詫びる…
    最近、いろんな場面に遭遇します。
    いい年をして、詫びることができないのは
    とても恥ずかしい事です。
    自分の誤りを「詫びる」とこが恥ずかしいのではなく、
    詫びれないことが恥ずかしいのだと痛感します。
    「???」と「・・・」の出来事が
    多くなりました。

  • Posted at 09:06h, 29 1月 返信

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    かけがえない家族を送るという意識の薄い葬儀が多くなったなと、感じております。
    それは、遺された家族においても、葬儀社や宗教者においても、欠けてはならないものと思うのですが・・・

  • Posted at 09:16h, 29 1月 返信

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    小罪無量のこの身なれど・・・
    誠の心を失わず、大きな願いに生きたいものです。

コメントを残す