2月 22日 確信
あなたと出会い30数年
同い年の58歳
2月 私の癌が見つかり あなたは仕事を辞めた
感謝の思いで一杯だけど 「迷惑をかけたな」という思いも拭われない
三度の抗癌剤の治療も甲斐なく これから免疫療法
はじめはそんなに仲のいい夫婦じゃなかったと思う
喧嘩もした 別居もした
あなたには 私以外の女もいたはず
子ども3人はそれぞれ自立したから、、、、安心
可愛い可愛い孫も抱けた
今 あなたは献身的に私を支えてくれている
毎朝 仏壇の前でお経を1時間も唱え 私の回復を祈る
食事を作り 病院まで車を走らせ 私を待つ
時折 部屋に籠るのは あなたの癖
6月「坐禅をしてみないか」とあなたは私に問いかけた
「しんどいから、嫌よ」と私は笑いながら言った
数日後今度は 「坐禅をしてみようよ」と誘ってきた
「うーん、それも悪くはないわね」と答えてあげた
ふと襲われる 死のささやき声に胸の奥が騒ぎ立つ
暴れたい気持ちを抑え 気づかれぬように独り止まらない涙をふく
突然の事故で亡くなった方の報道を見て思うことがある
もしかしたら 家の洗濯物は干したまま?
保育園の迎えは誰が行くの? 晩御飯の準備はどうするの?
いつもの暮らし 決まっていた行事 楽しみにしていた旅行
悲しみを比べてはいけないけれど・・・
この病のおかげで人生のまとめができると思った
几帳面な私には必要な時間 案外素敵なプレゼント
眼を閉じると 懐かしい顔
暖かな日々 緩やかな時間
友達 恋人 先生 お父さん お母さん
7月 あなたの選んだお寺で坐禅をした
「無理に足は組まなくてもいいですよ」と小太りの老師は教えてくれた
身体を真っ直ぐにして、ひと息ひと息を丁寧にと
およそ40分
病気のこと 子どもたちの顔 孫のしぐさ そんなことが心の中を駆け巡った
でもふと「あなたがいない!」と思った
慌てた私は 隣に坐るあなたの顔を見た
あなたがいた
私の隣で 穏やかに凛として とても綺麗なあなたの顔
この禅堂のなかで あなたと私が坐っている
この世界のなかで あなたと私がひとつになってここにいる
照りつける夏の太陽
秋の心地よい涼しい風
雪の季節は穏やかに過ごしたい
そして いつもの見慣れた台所
あなたと子どもたち3人とそのお嫁さんと大切な孫のあいるちゃん
留めておきたい このままいたい
目に映るものが優しい もったいないこの時間 何もかもが愛おしい
今 素直に思えるの
生れてよかった 生きてきてよかった
本当に生れてよかった 本当に生きてきよてかった
memo
1、癌は自らの死滅をもって終わりとする
2、癌は私と最後までいてくれる
3、悪性新生物 心臓病(心臓疾患) 脳卒中(脳血管疾患) 肺炎
4、TNM分類 29種類の癌
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