9月 30日 13回忌
父親の13回忌を迎えた74歳の老女。
二人の子供は、大阪と仙台でそれぞれに家庭を持つ。
数年前に夫を見送り、独りで暮らす。
正月に法事を申し込んだつもりが、忘れていたという。
9月に改めたところ、その時間になっても来ない。
何度も詫びて、「ほんとうに恥ずかしい」と顔を赤らめながら、声をひそめて続けた言葉は、「あのね」という告白。
「去年できたことができなくなってきてるのよ。
ほんとうに恥ずかしいのだけれども、予定していたことを忘れたり、時間に遅れたり、、、そんなことばっかり。用事があって家を出たら、無事に帰ってこれるだろうかという不安がすごいの。鍵を失くしたりしないだろうか、住所を忘れたりしないだろうかって」
きちんと始末をつけて生きてきたのだろう。
きっと矜持を抱き続けてきたのだろう。
彼女の佇まいは、いつも凛としている。
けれども、「認知症になったのかな」との思いと怖れのなかで暮らしているという。
「今、何か心を支えているものはありますか」と問うと、自分に言い聞かせるように「今日一日を生きること、それだけを考えている」と少し笑いながら応えられた。
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