大童法慧 | houe_admin
何かを得ようとするのではなく 何かを捨ててみよう
大童法慧,曹洞宗,僧侶,祈祷,相談,生き方,悩み
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Author: houe_admin




12月 31日 老い

「私はもう老い朽ち、齢をかさね老衰し、人生の旅路を通り過ぎ、老齢に達した。わが齢は八十となった。 譬えば古ぼけた車が革紐の助けによってやっと動いて行くように、恐らくわたしの身体も革紐の助けによってもっているのだ」   『ブッダ最後の旅』 白い頭 遠くなった耳 若くない身体 私を育ててくれた元気な頃の親の今の姿 改めて思う 自らの命を削って 我が子を育てたのだ、と 生意気な学生の頃 親を鬱陶しいと想った自分がいた 自らの人生の折り返し地点を過ぎた今 悔悟と時間の優しさを痛切に感じる 懐かしく暖かな日々 穏やかで緩やかな時 宝物のような故郷
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11月 25日 仕事?

「仕事を休みたくない。休めない。 親の葬儀であっても、それを会社に知らせたくない。 それを理由に休むことを、会社自体がよく思わないから」 最近は、死後一日のみおいての火葬が増えた。 24時間経てば、火葬ができるから。 数日おくと、お金がかかるから。 できれば、土日がありがたい。 通夜や葬儀はしなくてもいい。 でも、親戚の目があるから、通夜はしないで葬儀のみ。 できるだけお金のかからぬ方がいい。 訃報の電話を受けた時に真っ先に考えるのは自分のこと。 自分の予定、自分の都合、そして自分が一番楽な対応。 あなたの数日間を我が親との別れにも費やせない仕事って・・・何? あなたが恩情を忘れたとは、思いたくない。
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10月 28日 あなたが いなくなる

あの日 私は知りました 「あなたが、この世からいなくなる」ことを それは、あなたと話せなくなることでした それは、あなたと一緒にいれなくなることでした それは、あなたの温もりをじかに感じられなくなることで それは、あなたと共に時間を過ごせなくなることで それは、何をもってしても埋め合わすことなどできないと知りました そして、私もこの世からいなくなりたいと思いました 数年の時間を経て、改めて思う あの時、感じたことは嘘ではありません 今も、あなたの姿を探しています でも、、、あなたがこの世からいなくなっても 私は、どこででも、あなたと会えることを知りました そう、私が思えば、あなたは私のそばにいる いえ、あなたは、いつも私の中にいる
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9月 30日 現場

<出棺> 写真なんか撮るなよ…こんなところを。 優しい言葉なんかかけないでくれよ・・・いまさら。 最期だからといって、そんなに見つめないでくれ・・・恥ずかしいじゃないか。 棺の中の俺の顔を、待ち受けにするのか・・・ 花もそんなにいらないよ。だって、うっとおしいもの。 それなら、酒とおにぎりを入れてくれ。 <収骨> 「骨壺に収まりきらないので、少しお骨を砕いてもよろしいですか。 普通の人よりも、多くのお骨が残っていますから」と、お決まりの言葉。 「では、お近くにお集まりください」と声をかけ、おもむろに箸を構える職員さん。 固唾をのんで見守る一同。 できるだけ平静を装い、「こちらが、下顎です」と低い声で語る。 視線を感じながら、丁重に扱い、壺の中に収める。 「こちらが、右の耳、そして左の耳。穴があいてますよね。」 「そして、こちらが、喉仏です。坐禅をしているような様子です。 このように綺麗な形で残るのは、たいへん珍しいです。」 ・・・案の定、感嘆の声があがる。 嗚呼まるで、骨の品評会。
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9月 06日 木版

私が修行した道場では、夜の坐禅の終わりに、木版が鳴りました。 古参の僧が木版を打ちながら、「生死事大 無常迅速 各宣醒覚 慎莫放逸」と、禅堂に坐る者たちに低い声で朗々と告げます。 静寂の中、木版を叩く音が身体に染み込み、その声が身体に響き渡ります。 生死は事大にして、無常は迅速なり 各々宜しく醒覚すべし 慎んで放逸すること莫れ 一日が過ぎるのは早いから気をつけなさい、という警告ではありません。 時間が私たちの上を走り去っているのではないのです。 そう、私たち自身が過ぎ去っている。 だからこそ、この人生を放逸に過ごしてはならないのです。 あんなに暑かった夏も終わりました。 私たちの夏も過ぎ去りました。 人生を愛おしむ互いでありたいと願います。
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8月 05日 43回忌

43回忌。 白茶けた写真には、太っちょの男の子。隣には三輪車。 こちらに向かって、満面の笑み。 42年間・・・ご両親はこの笑顔に、どれほど救われただろうか。 この笑顔が、どんなに痛かっただろうか。 「和尚さんはいくつ?」 そう聞かれて「昭和44年生まれ、今年44歳です」と答えると、母親はうなずくように話を始めた。 「じゃあ、いっしょだ。うちのは、二つで亡くなったのよ。 生きていたら、和尚さんぐらいだったのね」 とてもとても可愛い、賢いお子さんだった、と。 2歳で、病で、あっという間に、と。 そして、二度と子供を授かることはなかった、と。 帰り際、母親が笑顔で言った。 「ね、お願い。握手して」
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6月 18日 諸悪莫作

諸悪莫作とねがひ、諸悪莫作とおこなひもてゆく。 諸悪すでにつくられずなりゆくところに、修行力たちまちに現ず。 『正法眼蔵』「諸悪莫作」 「悪い事をするなよ」と教えられ、学ぶなかから、やがて、「悪い事を行わない」という心が育つ。 その心とそれを支える出来事や周囲の心があいまって、「悪いことをしようとしても、悪いことをすることができない」という自分が現れる。 私たちの心は育ち、深めることができる。 だから、学ぶこと、即ち、学ぶために師を持つことがとても大切なのです。
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5月 15日 よすが

御法事の後席、ご長男が挨拶をされました。 「おかげさまで、母の一周忌を迎えることができました。 たくさんの方にお参りいただき、本当に嬉しく思います。 本日は、皆さまに、一周忌の記念品をご用意させていただきました。 母の大好きだった、華蔓草の造花です。 そして、それに見合うような一輪ざしを添えさせていただきます。 どうか、母を偲ぶよすがにしてください・・・」 「よすが」を漢字で書けば、縁である。 今と過去を結ぶ縁。 今と今をつなぐ縁。 今と未来を契る縁。 丁寧に心を込めれば・・・ 華、ひとつで、私たちは、この世界全てと繋がる力を持っている。
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